初めて魚を釣った竿は、真竹の延べ竿だった。
夏休み、ラジオ体操からの帰り道、近所の遊び仲間と
「今日は釣りに行こう!」と誘い合せ、
宿題の『夏の友』を少しだけ進めて、家を飛び出す。
ミミズを入れる空き缶と
仕掛けを買う少しの小遣いだけを持って
集合場所に走った。
友達はだれも竿を持っていない。
近くのゴミ捨て場でシマミミズを捕り
ゴミ捨て場の近くの駄菓子屋さんで、
今日使う釣りの仕掛けを買う。
おやつを一緒に買った記憶はない。
たぶんお小遣いにそんな余裕はなかった。
釣り場は【布施の溜】から流れ出る川と【布施の溜】。
この川を釣り上がって最後は【布施の溜】で大物を狙うのが、
夏休みお決まりの釣行行程だ。
釣り場までの途中で竹藪に寄り、
竿に良さそうな竹を探して
だれかが持ってきたのこぎりで竹を切出し、
枝を払って竿にする。
曲りくねった真竹の延べ竿。
当然焼きも入っていないのでヘロヘロ。
それでも、フナやカワムツ、オイカワ、ドジョウにザリガニ、
たまにはナマズやカメまで釣れた。
ザリガニとアザミの花の虫は
現地調達の餌になった。
【布施の溜】から流れ出る川では沢山の魚たちが釣れたが
【布施の溜】で大物が釣れたためしはない。
日が暮れ、仕掛けを上げる。
竿はいつもどこかに捨てて帰った。
そんな釣りを思い出しながら・・・・(続く)