『C&R』を題材に、こんな昔話を作ってみました。
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昔、むかし、近江の国は愛知川の上流で
毎日毎日魚釣りをして暮らしの足しにしている二人の者がおりました。
Sisyou 「今日もぎょうさん釣れたな~。そろそろ帰えろか?」
Kazu 「後1匹。後1匹だけ釣って帰りましょうー。」
Sisyou 「相変わらず、Kazuは釣りが好きやな~。」
バシャ!!
Kazu 「うぉ~!ごっついのが掛かりましたー。
わぁ~、めっちゃ綺麗なアマゴ!!こんな魚見たことない!」
Sisyou 「ほんまに綺麗なアマゴやな。見事な魚や。」
Kazu 「こんな綺麗なアマゴ、絞めるのは気が引けるなぁ。
尾びれを怪我している様でもあるし・・・・
今日もう十分釣った事やし、こいつは逃して帰りましょう。」
Kazuが釣りから帰ると、家の前に“渓”という名の若い女が、足を怪我して倒れておりました。
Kazuは歩くこともままならない渓を、怪我がなおるまで家においてやることにしました。
ある日Kazuは、この前釣った綺麗なアマゴの話を渓に聞かせました。
すると次の日の朝。
渓 「Kazuさんが逃がしてあげたというアマゴは、こんな魚ではなかったですか?」
と魚の彫り物をKazuの前に差し出して見せました。
Kazuはその彫り物が、あまりにも自分が逃がしてやった魚に似ている事に驚き、早速Sisyouに見せに行きました。
Kazu 「Sisyou、この前逃がしてやったアマゴを木彫りにしてみたんですが、どうでしょう?」
Sisyou「これは凄い、まるで生きているアマゴが川を泳いでいるようや。
Kazuにこんな才能があったとはな~。ほんまにお前が作ったのか?」
Kazu 「・・・・私が作ったんですよ・・・うまいもんでしょうー。」
Sisyou「うまいもんやなー。
ワシの釣ったイワナも作ってくれるか!」
Kazuは渓が作ってくれた彫り物を自分が作った事にして
Sisyouの頼みを快く引き受けて帰ったのでした。
Kazuは家に帰り、早速渓にSisyou の釣ったイワナの彫り物を作ってくれるよう頼みます。
Kazu 「渓が作ってくれたアマゴの彫り物をSisyouに見せたところえらく気に入ってくれて、
自分が釣ったイワナの彫り物を是非作ってくれというのやが、頼めるか・・・?」
渓 「Kazuさんのお願いとあれば、渓は喜んで作らせてもらいます。
でも2つだけお願いがあります。そのお願いをKazuさんが守ってくれはるのなら
渓は喜んで作らせてもらいます。」
Kazu 「解った、解った。で、その願いというのはどんなお事や。言うてみ・・」
渓 「一つ目は絶対に、彫り物をしている部屋に入ったり、のぞいたりしないこと。」
Kazu 「そんなことはたやすい事や。彫り物をしている部屋には絶対に入らんし、見いひん!」
渓 「二つ目は、殺生をやめる事・・・」
Kazu 「それは無理や。ワシの唯一の楽しみは魚釣り。これだけは止められん。」
渓 「それなら釣った魚は、この前のアマゴのように全部逃がしてあげてください。
それなら殺生にはなりません。」
Kazu 「釣った魚を全部逃がせと言うのか・・・
もったいない話やが、釣りができて、彫り物を作ってくれるというのなら、それも我慢しよう!」
それからというもの、SisyouとKazuは釣った魚を全部逃がしてやることにしました。
その代わり、釣った魚の話を詳しく渓にしてやり、その話を聞いて渓が作った魚の彫り物を
町で売っては、暮らしの足しにしたのでした。
ある日、SisyouとKazuが釣りをしていますと、Kazuの竿に大きなアマゴが掛かりました。
Kazu 「Sisyou~!この前逃がしてやったアマゴが掛かりました~!!」
Sisyou 「うぉ~。ほおんまや。見事なアマゴ。この前の奴やな。」
Kazu 「これは渓に見せてやらなあかんなー。持って帰って見せてやろうー!」
Kazuは、渓が作ってくれたアマゴの彫り物が、
本当の魚にどれほどよく似ていたかを見せてやりたい一心で、
アマゴを川原で絞め、内臓と取り出し、魚篭に入れて持って帰ったのでした。
Kazu 「渓~!帰ったぞ~!
見事なアマゴが釣れたから持って帰ったぞ。
渓が初めて作ってくれた彫り物のアマゴや。見てみぃ!」
ところが渓の姿が見あたりありません。
彫り物をしているのかと、部屋の様子を伺うのですが、
仕事をしている気配もありません。
Kazuは必死になって渓を探し回ったのですが、見つけることはできませんでした。
思い当たるところは手当たりしだい全部探し回ったのですが、
Kazuは渓の姿を見つけることができませんでした。
仕方なくKazuは渓との約束を破って、渓が彫り物をする部屋に入ってみました。
するとその部屋の中は
生臭い魚の匂いが立ち込め
机の上には作りかけのアマゴの彫り物。
その彫り物の腹は彫刻刃で裂かれ
床には魚の臓物が落ちていたのでした。
Kazuは自分が絞めたアマゴが、渓の化身であったことに気づき、
自分が渓との約束を破り、取り返しの付かない事をしてしまったことに気づいたのでした。
おわり・・・。
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今年も一年楽しい釣ができました。
来年もまた楽しい釣ができますように・・・・・
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