Kazu 「Sisyou、昔はこの辺りでも仰山(ギョウサン)釣れたんですかね?」
Sisyou 「愛知川の最上流・神崎川辺りは、昔は尺イワナの宝庫って言われてたらしいで。」
Kazu 「昔は・・・とか、十年前は・・・五年前は・・・去年は・・・先月は・・・先週は・・・昨日は・・・
って。
釣師の話はそんなんばっかですね。
Sisyou 「ほんまやな。今釣れるとこを教えて欲しいもんやな。」
Kazu 「去年シラメ釣りに行ってたら、携帯で友達が
“今、関観ウラで雨みたいなライズや!”
って言うんで飛んで言ったら、ライズの“ラ”も無い。
友達曰く“たった今まで夕立みないなライスやったのになあ~”やて!」
Sisyou 「釣師の話は、そんなもんや。
ワシもかなり昔から釣りしてるけど
子どもの頃、うちのお爺も昔はもっと釣れたって言うてたからな。」
Kazu 「Sisyouのお爺もかなりな釣師ですね。
それにしても、昨日まで釣れてたイワナが今日いないっちゅう事は
イワナは一体どこに隠れているんですかね。」
KazuもSisyouもまだまだ修行が足りんな!
ワシらの隠れ家は岩陰でも滝つぼの奥でもない。
「昔」の中にあるんや。
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『イワナの夏(湯川豊 著)』の冒頭より
イワナのもっとも堅固な隠れ家は、「昔」の中である。
私に釣られるはずの幾千のイワナは、どういうわけか知らないけれども、
幽谷の滝壺の奥深くではなく、みな「昔」の中へ逃げ込んでしまうのだ。
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